おじいちゃん、おばあちゃん。お父さんにお母さんに、子どもたち。三世代で旅行しようと思ったとき、たとえば真ん中世代の夫婦は、こんなことを考えたりする。
親孝行がしたい、自分たちも日常を離れて休暇気分を味わいたい、子どもたちにも、思い出に残るような体験をさせてやりたい。
しかし、そんないいとこ取りの旅の企画をするのは大変だ。

そんなとき、うってつけの場所がある。
千歳空港から車で約1時間半、札幌から無料送迎バスで約50分、支笏洞爺国立公園の中というロケーションを持つここ定山渓ビューホテルだ。
外国には、フランスのエヴィアン、イギリスのバース、ドイツのバーデン・バーデンなど、古くから温泉(スパ)の恵みに惹かれて人々のつどう町がある。「札幌の奥座敷」と呼ばれる定山渓温泉も、そんな町の一つ。
温泉に入って部屋でゆっくりくつろぐもよし、お父さんと子どもたちは温泉プールの施設で体を使った遊びに挑戦、その間お母さんは大浴場で入浴とあかすり(やってくれる人が浴室内に出張してくれる)の両方を味わうもよし。
トランス・ジェネレーション(世代横断)型の空間になっているのだ。
定山渓ビューホテルで、圧倒的な体験ができるのは、なんといっても地下1階と2階を占めるウォーター・アミューズメント・ゾーン「水の王国ラグーン」と、大浴場の「湯酔郷(とうすいきょう)」だ。
ホテルは建物に高さ制限がある国立公園内という立地のため、周りの景観を壊さないようにひっそり建っている。しかし、そんな外観からは想像もできないバラエティに富んだ施設が、地下水脈のように広がっているのだ。
「水の王国ラグーン」では、ボディボードでウェーブに乗る「フローライダー」が超目玉。
世界でも6番目に設置されたダイナミック施設。水に入っていくときは脚を下ろしたまま、吹き出してきた波にのって回転するときは、手足をあげてバランスを操作するのがコツ。
2、3時間で上達するのは難しいが、延べ1日あればしっかりマスターできる。
若いカップルやお父さんと男の子の組み合わせにとっては、思い出に残るマリン・スポーツ的なアドベンチャーになる。
アクアガラス製の円筒形のプール(直径、深さともに5メートル)では、スキューバ体験ができる。初心者は体験ダイビング(20分1,000円)や素潜りで、ライセンス保持者は30分の潜水で海の気分が味わえるはず。
ほかにも、海を疑似体験するウェーブ・プール、やんちゃ盛りの子どもたちなら、高さ2メートル、長さ25メートルの滑り台の「ウォータースライダー」などがお薦め。
水遊びデビューするキッズのための底浅プールもある。


「水の王国ラグーン」には、遊びのための施設だけではなく、高齢者や女性にとって嬉しい癒しの施設も充実している。
お湯の中にあるボンボンベッドのような椅子に体を伸ばして「寝湯」ができるプール“肩こり族”には嬉しい、打たせの滝のプール、外周に沿ってある「流水プール」(周囲120メートル)は、毎分30メートルの流れ。水中歩行など、お年寄りや陸上での運動と同じ効果を得たい人などには最適だ。
なお、これらのゾーンの一番奥にあるドアを押して屋外に出ると、右手に小さな山小屋風のサウナ、左手に露天風呂がある。
水着で入れる露天風呂はここだけ。両親や子どもたちなど、家族全員で露天風呂を楽しみたかったら、ぜひここへ。渡る風も気持ちいい。
サウナは片側が全面ガラスで、自然の風景が眺められる作り。屋内の密室型サウナとはまったく違った解放感がある。大画面のテレビも設置されているので、ついつい長居してしまいそう。
水の王国ラグーンと同じく、地下の2層にわたって広がっているのが、大浴場の「湯酔郷(とうすいきょう)」。ここではありとあらゆる種類のスパの恵みを味わうことができる。
湧泉、泡風呂、ジェットバス、薬湯(三種)、ミストサウナに、サウナを出た後の水風呂などなど。露天風呂も渓流沿いの植物が目に優しく、とても風流。日常の気持ちのコリも、ゆっくり溶け出していく。新緑のとき、紅葉のとき、雪景色のとき。四季によって違う風情もここならではの贅沢。
「湯酔郷」は、朝9時半と夜12時に、男湯と女湯の施設が入れ替わる。
例えばミストサウナやジェットバスなどは夜10時までの利用なので、お目当てのものがあったら時間を確認して入浴したい。露天風呂の趣が違うのも一興。
はっきり言って、とても1日ではこの施設の楽しさを味わい尽くせない。かつて泊まったことのある方でも「ヘえ〜、そんなゾーンがあったんだ」と思われることも多いはず。
リラックスが目的なら、何日かの滞在をお薦めしたい。


定山渓ビューホテルで、これまた絶対はずせないのは最上階の16階にある大浴場、その名も「星天」という名のお風呂。全国の温泉宿でもあまり聞いたことがないスペシャルな施設だ。
朝はガラス越しにさんさんと朝日が差し込み、午後は青空を眺めながら。夜になるとまさに星々に見守られながらのパノラマ入浴。さらにこの内風呂を出ると、屋上にこぶりの露天風呂も待っている。
ロマンティックな気分にひたるもよし、温かいお湯につかって星座を指さしながら、星にまつわる物語や宇宙の話を子どもに話して聞かせるもよし。
マザーネイチャー=「大自然」の懐に抱かれるこんな体験は、ちょっと類がない。まさに、この定山渓ビューホテルでしか味わえない中空体験。
これだけをお目当てに宿泊しても、十分価値がある。
と同時に、「星天」のロビーには実用的な特典も。高機能のマッサージ機が並んでいて、使用は無料。温泉に入った後、マッサージ機に横たわり、リモコン片手にメニューを選び、脚、腰、背中など疲れた箇所を集中的に揉んでもらうと、思わず“極楽、極楽”と呟きたくなる。入浴客が少ない時間帯がねらい目。体をいたわることが目的の祖父母世代は、ここでマイペースの午後を過ごすのも楽しいはずだ。
朝と夜はバイキングになるダイニングルームの広さには驚く。立食だと、いちどきに約2500人も食事できると聞くと、ちょっと騒々しいまかもしれないという危惧を持ってしまいがちだが、そんなことはない。
2層分が吹き抜けになった高い天井、全面ガラス張りの向こうに北海道の山々の風景が広がる明るくて清潔な空間だ。
入ってすぐの所にビュッフェ・テーブルがあり、デザートのテーブル、前菜のテーブル、メイン料理のテーブルと、ビュッフェ・テーブルが奥に向かって“島”のように並ぶ。テーブルの右側が別注文の料理を受けるオープンキッチン。左側がゲストの座る広々としたテーブル席だ。
料理は、和食なら肉ジャガや昆布巻きマグロの山かけ、にぎり鮨(マグロ、イカ、サーモン、海老)。洋食ならサーモンとキャベツのクリーム・スパゲッティやカボチャのグラタン、鶏もも肉のハンガリー風煮込み。中華なら麻婆豆腐や白身魚の甘酢、ラム肉のオイスターソース炒め、海鮮焼ソバなど、和洋中合わせて60品ほどあって、とてもここには書ききれないほど多種多彩。
ほかにもオープンキッチンのカウンターにある天ぷら、小どんぶりで供される量が丁度いいラーメンもバイキングのうちなので、お見逃しなく。
一番奥の蒸し器のあるテーブルでは、新鮮な北海道産のトウモロコシなど旬の特産品が熱々で食べられるのも、旅のいい思い出になる味。
生け簀に入ったカニなどの特別注文は、キッチンの横にある黒板を見てどうぞ(有料)。
バイキングは、今日は祖父母世代の好みを優先とか、子どもたちが好きな味を優先などと悩まないで、三世代がそれぞれ自分の好みにあったものを、同じ場所で食べられるのが、なんといっても便利。
あれも食べたい、これも食べたいと、着席したテーブルと「島」をついつい何度も往復してしまった。


お酒は、例えば北海道産のワイン(小樽、余市、函館)がハーフボトルで980円、フルボトルで1900円。
フランスのポマールやモンラッシェなど、品質からするとけして高くない高級ワインも取りそろえている。
カップルなら、室料は適当に抑えて、こういった機会に高級ワインの味を試してみるのも、きっといい経験になる。
(料理の内容は一例で時期によって変わるのでご注意を)
和の朝食を食べたいときは、夜と同じ「グランシャリオ」の朝食バイキングへ。
焼き鮭、筋子、ウインナー、煮物、北海道らしいニシン入りの自家製白菜の漬け物など、一風呂浴びたあとの朝食はまた格別。お粥や赤飯もある。


洋食がよかったら、本館2階のバイキング「ファミリア」へ。
メニューは、スープ類、スクランブルエッグ、ベーコン、ソーセージ、オレンジ、ライチ、パイナップルなどのフルーツ類、野菜サラダやマカロニ・サラダなど。
ホテルのパン職人さんによるクロワッサン、レーズンパン、マフィン、デニッシュなど焼きたてのパン類が充実している。
バターのいい香りが漂うクロワッサンは特にお薦め。出遅れると、売り切れのこともあるのでご用心。
卵料理も、人手に余裕があるときは専用のエッグフライパンで目玉焼きやプレーンオムレツを作ってもらえる。
自宅で作ると、朝のあわただしさの中でついつい火を入れすぎてしまう卵料理だけに、黄身がトロリの目玉焼きやフワフワのオムレツは幸せなプロの味。